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2005年08月23日
ヒトラー 〜最期の12日間〜
約150分、延々と重苦しいシーンが続くこの映画を見て僕は安心した。
ドイツの敗戦が決定的にみえ、自殺直前12日間のヒトラーを中心にナチスの壊滅を描いたこの作品である。
側近達へのヒステリーな面、またエヴァ・ブラウンや秘書に見せる優しい一面など、普通な人間の一面が見えるように描かれている。将校たちも、動揺や離反など、極限状態で見える人間の素が描かれている。第二次大戦、ユダヤ虐殺など、ドイツを戦争に導いた悪の独裁者ヒトラーのナチス党がである。あまりにも人らしいこのことには賛否両論があるらしいけれど。
今から、その安心の訳を書こうと思う。
日本においても、ヒトラーやナチズムと同じように戦争の原因を軍部が日本を乗っ取り、侵略戦争に導いたというように言われる。善良な国民を騙し戦争に邁進した悪の根源だと。
もし本当に、これらの人の為で戦争が起こったなら、既にヒトラーや日本の戦犯がいない今、もう戦争は起こりようがないと、日本においては戦争放棄を唱った憲法9条もあることだし、戦争は完全に過去のものだと思ってしまう。こう思うことが非常に怖いのだ。現実に自衛隊という名の軍隊を持っていて自衛名義とはいえ戦力は保持している。改憲への動きも見える。
戦争を見返す時に、悪の根源の具現化のような人がいて、そのおかげで戦争が起きたと決めることは、分かりやすいけれども逆に多くのことを見落とすことになると思う。戦争とは、後の勝敗は関係なくどの国においても自衛の名目で行われる外交の最終手段だと思う。当時の国内外の政治的状況、国際慣習など様々な条件を丁寧に読み解くこともしないで、好戦的な悪の根源が導いたという程度の理解は、ある程度の時間を経たら、気づかぬうちにまた同じことを繰り返してしまいそうな気がするのだ。
後に狂気と言われるようなことでも、当時その場所にいれば普通なことはいくらだってあると思う。徐々に国が危ない方向にいってしまうことも多々あると思うのだ。後に悪の根源と言われる人を、それ以前に、どう批判的に捉えることが出来るのか?すでにいないヒトラー、東条、ナチズム、軍国主義は悪だったという名前のついたラベルだけ知るような知識は何の役には立たないと思うのだ。だとしたら戦争自体を避けるべきことだと認識し、現状を自分の視点で見て意見を持つ以外には方法はないと思う。
そんな単純な論法に疑問を感じていた自分は、この映画がヒトラーを普通の人間として描いていることに、また終戦後、規制が多かったと思われるドイツでこの映画が出来たことに、安心感を覚えたのだ。歴史的に象徴的に具現化された狂気といえど、弱々しく描かれる人物像から、ヒトラーでさえ普通の人間であるということを示す映画だと僕には捉えられた。史実を基にはしているが、所詮映画であり、表現である。正確、不正確とかいうのではなく、表現であるからこそ、そう描く意思を感じれた。60年経った今、このようにヒトラーをドイツ人自身が描くことは戦争を冷静に見つめ直そうという意思に感じられた。何故ナチズムが生まれたのか?と。
ヒトラーは悪くなかった、当時のドイツがそうさせたのだというつもりはない。恐ろしいことが起こったと思う。ただ、あのヒトラー達を台頭させた原因や素地が必ずあるはずだし、他にも当時のドイツやヨーロッパの状況を調べることも重要だと思う。
世に言われるような狂気や悪の根源を具現化したようなものなど、ないと思うのだ。それはつくられたイメージであったり、また日常の中に潜んでいるある状況での一面だと思うのだ。
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上記の記事の最後の段落は、同監督の前作「es」を見ると、よくわかるかもしれない。
1971年スタンフォード大学で実際に行われた心理学の実験を題材にしたこの映画は普通のありふれた人間が置かれた状況で狂気にまみれていく様を描いた作品である。
公募で集められた人達を、看守役、囚人役に分け、与えられたルールに基づいて疑似監獄シュミレーションを行うのである。実際には7日目に中止されたこの実験を描いた映画は、人間がいとも簡単に変わりゆく様子を恐ろしい程の生々しさで描いている。
お勧めです。
comment
TBさせていただきました~!
>後に悪の根源と言われる人を、それ以前に、どう批判的に捉えることが出来るのか?
>すでにいないヒトラー、東条、ナチズム、軍国主義は悪だったという名前のついたラベルだけ
>知るような知識は何の役には立たないと思うのだ。
私はどちらかといえばこの映画のつくりに否定的な見解を持っていますが、上記のご意見には全く賛成です。否定するにしても、「殺人鬼の人間性を振り返る必要など、どこにあるのだろうか」という独ターゲスシュピーゲル紙の主張には、それこそナチのプロパガンダと同質の「硬直した人間不在の狂気」を感じますから。
投稿者 桜樹ルイ16世 : 2005年11月19日 19:03
遅れましたが、コメント、トラックバックありがとうございます。自分のブログでたまに何かを感じた映画を見ると文章を綴ってしまいますが、コメントをもらえたのは初めてなので驚きと共に嬉しいです。
でわでわ。
投稿者 mhrs : 2005年12月13日 02:34